2012年4月28日土曜日


山を下りると初夏だった。



一人で奥多摩の山小屋に篭って過ごしたのは、4ヶ月半。

冬は訪れて、居座って、そして去っていった。

朝起きても氷点下にならないことの方が多くなってきた。最初は新鮮な驚きだった。ああ、もう寒くないんだ、としみじみ思った。けれどしばらくするとそれも普通になった。

ふもとでは桜の花が咲き、キブシやダンコウバイの黄色い花が渓谷を彩りはじめ、今年初めのウグイスの声を聞いたころ、僕の小屋にも新しい小屋番アルバイトの応募が来た。



新しい小屋番が試しということで僕の代わりに来て、5月の連休までは僕は東京で過ごすことになった。
その後また戻ってしばらく過ごすが、もう小屋で一人きりというわけにはいかない。
一区切りはついて、これからはまとめに向かう時期だ。



東京に戻ると、一週間あまり曇りや雨の日が続いた。

花曇というように、東京の春の空は低い雲に覆われることが多い。理由は二つあって、春になると海からの風が吹き込みがちになることと、雲や霧の核となる人間由来のエアロゾルが多いことだ。

そんな天気ばかりだったので、星を見ることも忘れていた。


久しぶりに晴れた今日、きれいな月と金星が見えた。
江戸川区の広い道路を西に向かって自転車で走りながら、ああ、久しぶりだな、と思った。

公園ではハナミズキの大きな花が枝一面に咲いていた。



休学して得たものは何だろうか。

自然の中の生活で、身体、そして感受性は多少なりとも変わったような気はする。
当初目指していた段階に達しているかはさておき、それは本当に必要なものだったと思う。

長いリハビリを経て、ようやく自分の足で歩くことを覚えてきた。
そんな感じだ。
たぶん大事なのは、これからだ。


まあしかし、何だかんだで都会の生活は豊かですばらしい。
寒くはないし、川を渡れば賑やかな街もある。
買い物に行って、好きな料理も作れる。銭湯にも行ける。好きな音楽だって何でも聞ける。
ああ、エレカシが聞きたいな。